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昨年11月から今年2月まで決行された米脚本家組合ストの影響か、目玉となるべきアメリカ映画の出品作が例年よりも激減。代わりに日本映画が3本エントリーし、97年「HANA-BI」以来の金獅子賞受賞を狙う。日本が誇る宮崎、北野、押井監督のライバルとなる作品たちも要チェック!
Rachel Getting Married(監督:ジョナサン・デミ/アメリカ、116分)

名匠デミ監督が、アン・ハサウェイ主演で贈るハートフルドラマ
情緒不安定で10年間リハビリ施設を入退院してきた問題児キム(「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイ)が、姉レイチェル(「シンデレラマン」のローズマリー・デウィット)の結婚式のため、ブックマン家に帰ってくる。その週末、自宅は多くの招待客でごった返し、ご馳走と音楽と愛に満たされていたが、問題児キムの行動が例によってトラブルを引き起こしてしまう。しかしそれは、長年うっ積していた家族全員の気持ちを前向きにする動力源ともなるのだった……。「羊たちの沈黙」「フィラデルフィア」の名匠ジョナサン・デミ監督が04年の「クライシス・オブ・アメリカ」以来久々に手がけた劇映画で、キラ星のようなアンサンブルキャストで紡がれた“家族の肖像”のドラマ。脚本は、これが脚本家デビューとなるジェニー・ルメット。セミリタイアしていた53歳のデブラ・ウィンガーが久々に出演している。
Teza(監督:ヘイレ・ジェリマ/エチオピア・ドイツ・フランス、140分)

もうひとつの「ホテル・ルワンダ」「ラストキング・オブ・スコットランド」
エチオピア出身で、UCLA演劇科卒業後、ドキュメンタリー界で活躍したジェリマ監督の社会派ドラマ。祖国エチオピアの「去ろうとすれば見つかり、戻ろうとすれば失われる」ということわざをベースにした物語。ドイツで薬学を勉強し帰国した主人公アンバーバーは、祖国のために身を捧げて、自分の腕を国民の健康増進に役立てようとするが、末期状態にあった独裁者メンギスツ・ハイレ・マリアムによる軍事独裁政権(1977ー91)によって活躍の場を奪われてしまう。武力闘争とは無縁の田舎に逃げ隠れる彼だったが、慰めのようなしばしの平和は短く、すぐさま軍部と反乱軍の衝突に巻き込まれる。彼は人生の岐路に立ち、このまま緊張に耐える人生を送るのか、周りの怒りを結集して立ち上がるか、その選択をする必要に迫られる。
Bumaznyj soldat(Paper Soldier)(監督:アレクセイ・ゲルマン・Jr./ロシア、116分)

「地球は青かった」の人類初の有人宇宙飛行の偉業の影に隠されたドラマ
1961年はじめ、カザフスタン。主人公はソ連の宇宙飛行士のために働く軍医ダニエル・ポクロフスキー。彼はモスクワに住むニーナという妻がいながら、現地の若い女性ベラとも恋愛関係にあった。彼は若い宇宙飛行士が国のために命を犠牲にする宇宙開発計画に同意できなかったが、彼自身が人類初の有人宇宙飛行計画(ガガーリンが有名)のスタッフとなってしまう。夫に従ってカザフに向かったニーナは愛人ベラの存在を知るが、夫の精神状態を理解して彼の元を離れなかった。発射前日、そんなニーナとベラを捨て、脱走を計るダニエルだったが……。前作「The Last Train」(03)もヴェネチア出品作となったロシア人監督アレクセイ・ゲルマン・Jrの新作。監督の父は「フルスタリョフ、車を!」(98)のアレクセイ・ゲルマン監督。
Sut(セミヒ・カプランオール/トルコ・フランス・ドイツ、102分)

「高校は卒業したけれど」、発展するトルコ社会の現実を描くユセフ青年の物語
高校を卒業したものの、ユセフ(メリヒ・セルチュク)は大学入試に失敗。詩を書くことに情熱を燃やしたが、彼の詩はまったく無名な文学雑誌に載る程度。詩は売れず、ユセフと母ゼハラが売って生活の糧にしていた牛乳の値段も見る見る急落し困りはてる。そんな頃、ユセフは町の駅長と密会している母の姿を見てしまう。先行きの見えなくなった不安にどう対処したらいいのか、心を痛める青年ユセフの視点から、近年経済的社会的発展を遂げている変革期のトルコの現実を描く社会派ドラマ。トルコ語の原題は「牛乳」の意味。本国トルコのイスタンブール国際映画祭グランプリを受賞、今年のカンヌ国際映画祭批評家週間に出品されたに前作「Yumurta」(卵)に続く、セミヒ・カプランオール監督の“ユセフ3部作”の第2部。なお、第3部は「Bal」(ハチミツ)になる予定で、すでに製作に入っている。
アキレスと亀(監督:北野武/日本、119分)

“世界のキタノ”が感動的な夫婦愛を謳い上げるオフビートドラマ
父が絵画のコレクターという裕福な家庭に生まれた真知寿(北野武ほか)は、幼い頃から絵を描くことが大好きで、画家になるのが夢だった。しかし父の会社が倒産、突然両親が自殺したことで彼の環境が一変。独りぼっちになった真知寿は、画家になる夢だけを人生の目標として生きるしかなくなり、以来、貧困生活を送りながら創作活動に打ち込む。だが、彼の作品は誰にも理解されず、画家として芽が出ない日々が続く。そんなある日、ひとりの理解者、幸子(「明日の記憶」の樋口可南子ほか)と出会う。彼女は絵を描くことしか知らない純朴な真知寿に惹かれていく。やがて2人は結婚、真知寿の夢は夫婦の夢となり、成功をつかむためにさまざまな作品に挑戦していく。ヴェネチア映画祭とは何かと縁があり、1997年「HANA-BI」で金獅子賞グランプリ、03年「座頭市」で銀獅子(監督)賞を受賞している北野武の最新監督・脚本作品。温かな夫婦愛をユーモラスに描いたヒューマンドラマで、北野は主人公の後半の人生を演じているほか、劇中の挿入画全作品を手がけた。
崖の上のポニョ(監督:宮崎駿/日本、アニメ、101分)

誰もが口ずさみたくなる“主題歌”とともに日本映画界を席巻した宮崎アニメ
「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」の宮崎駿監督が、アンデルセン童話「人魚姫」をモチーフに、“人間になりたい”と願うさかなの子・ポニョと5歳の男の子・宗介の愛と冒険を描き出した最新作。CGを一切使わず、セル画の手描きアニメに風合いに徹底してこだわったイマジネーションが、主題歌とともに日本の映画ファンの心をつかみ、早くも100億円突破の今年最高の大ヒットを記録。海辺の一軒家に暮らす宗介は、ジャムの瓶にはさまっていたさかなの子・ポニョを助け出す。彼らは互いに好きなるが、ポニョは海の住人である父に連れ戻される。しかし、“人間になりたい、宗介に会いたい”という気持ちが抑えられないポニョは、父が貯めていた“生命の水”を海中にまき散らし、つくり出した大津波に乗って、崖の上の宗介の家に向かって一目散に駆け出していく……。宮崎監督は05年、ヴェネチア映画祭から長年の功績が讃えられて栄誉金獅子賞を授与されている。
Vegas: Based on a True Story(アミール・ナデリ/アメリカ、102分)

ラスベガス郊外の小市民の哀歓をすくい上げた、小さな人間讃歌の物語
アメリカで最も享楽的で虚飾に満ちた大都会ラスベガス。その郊外に、エディ・パーカーと妻トレイシー、12歳の息子ミッチの3人のブルーカラーの家族が暮らしている。病みつきのギャンブラーでもあるエディは大きな勝負の出来ない小心者で、トレイシーはすぐにも壊れてしまいそうな家族をとりまとめるのに精一杯。そんな彼らの前にある日謎の男が現れ、「この家には何か特別なものがある」と意味深な言葉を残す。その言葉が家族に波紋を投げかけ……。監督は、70年代からイラン映画界で活躍、80年代末にアメリカへ移民し、ニューヨークを舞台にした「マンハッタン・バイ・ナンバーズ」(93)などを手がけたイラン人アミール・ナデリ。ほとんど無名の俳優によって演じられたドラマは、ラスベガス郊外に暮らす富と社会的地位とは無縁な人々の哀歓をすくい上げる。
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