さまざまな雑誌で活躍する映画ライターが集まり、第79回アカデミー賞の行方を、座談会で言いたい放題! 普段から映画を冷静な目で観ている彼らのするどい切り込みに、アカデミー賞の審査員もドキッとする(?)ような発言が飛び出した。
座談会出席者プロフィール
| 司会・女A: | イニャリトゥが苦手な頼りない司会。 |
|---|---|
| 女B: | 『バベル』の菊地凛子の受賞だけは認められない辛口ライター。 |
| 男A: | ダメ人間を描いた映画が好きだけど『リトル・ミス・サンシャイン』は嫌いなライター |
| 男B: | 『クィーン』大絶賛のちょっと熱血ライター。 |
| 男C: | 一歩引いた視点を持つ冷静ライター。 |
司会・女A: 作品賞は華のあるハリウッド大作『ドリームガールズ』が外れて、『クィーン』がエントリーしました。
男A: 王室擁護の映画だと言われても仕方がないと思うし、作品としてそういうところをクリアしてないように見える。
男B: そうかな。一見、そういう良い話に落ち着きそうなんだけど、ラストは辛らつな映画になっていたと思ったよ。
男C: 僕はエリザベス女王を一人の人間として描いているから、政治的な意味を感じそうな人も、感じない作りになっていたと思ったけど。
男A: だから怖いと思うんだよ。たとえば『ラストキング・オブ・スコットランド』のイディ・アミンは、物語として観ることができる。実際にフィクションなわけだし(アミン大統領は実在していたが、物語はフィクションです)。でも、『クィーン』は今ここに実在している、健在している人に対してドキュメンタリーのような形式をとってしまっている。それが映画倫理的に許されるのかどうか……。
司会・女A: じゃあ、『クィーン』の作品、監督の受賞はない感じ?
女B: イギリスではどう受け入れられるのかな。たしかにヘレン・ミレンは上手いと思ったけど、わたしは騒ぐほどの作品じゃないと思った。
男A: これはもうノミネートされたこと自体が、アカデミー会員のアピールなんだよ!「『硫黄島からの手紙』みたいな日本語の映画も認めます」というのと同じように。
女B: そういう意味では、今年のノミネートは国際色豊かだよね。
男C: 『バベル』も半分以上、英語じゃないしね。
女B: ちょっと違うけど、『ディパーテッド』だって元々は香港の作品なんだし(笑)。
男C: そうなると、純粋なアメリカ映画は『リトル・ミス・サンシャイン』しかないのか。
男B: これも半ばインディペンデントだしね。
男A: 確かに、ハリウッド大作みたいなものは入ってないな。
女B: だから、「『ドリームガールズ』が入らなかったのは不思議」という話になるんでしょう。
司会・女A: 『ディパーテッド』はどうですか?
男B: 賛否両論あるのは知ってるし、ネガティブな声もよく聞くけど、僕はかなり擁護派なんだよね(笑)。それでも「なぜ作品賞なのか」って、正直分からない。スコセッシ作品の中でも、往年の勢いを取り戻したという感じではさらさらないし、むしろ『アビエイター』よりも質はよくない。
男A: 本命があると、結局、作品賞も監督賞もどっちもとるでしょ。だから、そろそろスコセッシに監督賞をあげるための布石なんじゃないのかと、僕は勝手に思ってる(笑)。もう、ノミネートも7回目だしね。7回目といったらそろそろ……というか、かわいそうっていう同情がわきやすい。
司会・女A:『リトル・ミス・サンシャイン』は小粒すぎて受賞はなさそうだけど、イーストウッドという線は?
男A: もう、さんざんあげたから(笑)。
男B: たしかに、過去にもらってる人はハードルがあがっちゃうよね。
男C: 冷静に一歩引いて、この5作品をながめてみると、作品自体の完成度という意味でも、やっぱり『バベル』かなと思う。
『クィーン』
© Laurie Sparham/Courtesy of Miramax Films
『硫黄島からの手紙』
© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc. and Dreamworks LLC. All Rights
Reserved.
『バベル』
© 2006 by Babel Productions, Inc. All Rights Reserved.
『ディパーテッド』
© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc.