インタビュー
ブロードウェイの一流ミュージカルでも絶対にお目にかかれない、ペンギンたちによる前代未聞のエンターテイメント「ハッピー・フィート」。フルCGアニメならではの奇想天外で愛と希望に満ちた物語を創り上げたジョージ・ミラー監督に映画評論家の佐藤睦雄氏がインタビューしました。
Q.クライマックスのペンギンによる群舞(グループダンス)が圧巻だったのですが、これまでご覧になった群舞の中で感動したことは?
グループダンスは大好きで、特にタップダンシングは最高だね。ご存じのように、フレッド・アステアのダンスは美の極致だと思うし、ジーン・ケリーのダンスには驚きしか感じない。特に『雨に唄えば』は最高だ。この映画では主人公のペンギン、マンブルがタップを踊る。その動きをモーションキャプチャーしているわけなんだが、アステアやケリーの動きにあるような幸福感をかもし出せたことはとてつもなくエキサイティングな体験だった。また、すべての動きはアステアやケリーにインスパイアされているんだ。タップは音楽を感じて、全身で喜びを表現するダンスだからね。それが集団でのダンスになると、もう言葉では表現しえない感動になるからね。
Q.共同で監督・脚本にあたったジュディ・モリスさんとはどのように役割分担を?
われわれは脚本段階でも演出段階でも、よく話し合ってさまざまなことを決めていった。ジュディ(・モリス)は女優で、シンガーで、ダンサーなんだよ。それに彼女はすべての歌を理解しているし、記憶している歌はそれこそ数え切れないほどなんだ。とても知的な女性で、あらゆる局面で最高のアドバイスをくれた。俳優たちに声を吹き込んでもらうとき、またコンピュータにタップダンスの(キャプチャーしたものを)入力するとき、みんなでよく話し合って、グループワーキングのかたちをとったんだが、とてもすばらしいアイデアを提供してくれた。音楽が彼女を祝福しているからだろうね。
Q.“心の歌”がこの映画の中で重要なカギになっていますが、ジョージ・ミラー監督ご自身の“心の歌”とは何なのですか?
『カサブランカ』で使われた(ホーギー・カーマイケルが歌った)「アズ・タイム・ゴーズ・バイ(時の過ぎゆくままに)」だよ。ワーナー・ブラザースの映画が始まってロゴが現れると流れるあの歌だ。よくホームパーティなんかで妻や子供たちの前で歌うんだけど、“パパ、へたくそなんだから歌わないで、せっかくの名曲なのに”と言われるよ(笑)
Q.噂になっている『マッドマックス4』は今どんな状態で?
すべての準備が完了しているよ。『ハッピーフィート』の前に、ロケ地を探して、アフリカのナミビアなどいくつかの国ですでに撮影を始めていたんだ。ところが、映画さながらに戦争が始まって、アメリカのお金とオーストラリアのお金、われわれの製作費の20%を失った。セキュリティのため、機材を船積みせざるをえなかった。そこにワーナーから『ハッピーフィート』の話が舞い込んで、グッバイ『マッドマックス』、ハロー『ハッピーフィート』となった。それから2年経った。今でも次回作として『マッドマックス4』を撮る意欲は満々だよ。ロケ地も決まっているし、すでにデザインはできあがっているからね。問題はメル・ギブソンだが、第1作から『マッドマックス』の主役は彼に決まっているんだが、調整が必要なようだ。私は監督・プロデューサー・脚本家をやるわけだが、万が一、彼を引っ張り出せないなら、もっと若くてタフなスターが必要かもしれないね。
Q.ロビン・ウィリアムズは撮影中も、まわりを抱腹絶倒させたんじゃありませんか?
ロビンが演じたペンギンは皇帝ペンギンとは違うので、スペイン語を話すという設定だった。録音中からスペイン語なまりの英語でジョークを連発するもんだから、まわりはもう大爆笑の連続でね。彼が『マイ・ウェイ』を歌う場面は、マンブルの代わりに求愛の歌を歌うシーンだったので、私は監督として、彼に“こんな情感を出せないか? そのまま続けて”と何度も何度もお願いした。とてもハードワークだったが、大してNGを出さず、全部のテークをすばらしいパフォーマンスでやり遂げてくれた。
Q.ブリタニー・マーフィーの歌声には本当にビックリしました。
ブリタニー・マーフィーは魅力的なハスキーボイスだったね。あれは予想外に最高だった。クイーンのフレディ・マーキュリーの名曲をあそこまで歌い上げるとは、ね! ヒュー・ジャックマンはブロードウェイの舞台で歌の実力は実証済みだし、ニコール・キッドマンも『ムーラン・ルージュ』で歌っている。スペイン語で歌う連中も芸達者だから、期待通りだったが、ブリタニーの歌声はこちらの予想を超えて、本当にスゴかった。
(文:佐藤睦雄)
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