『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞9部門を受賞した名匠アンソニー・ミンゲラ監督の最新作『こわれゆく世界の中で』。ロンドンに暮らす若き建築家のウィルは、ひょんなことからボスニア難民の未亡人アミラと知り合う。リヴという恋人がいながらも、彼女のとの関係に行き詰っていたウィルはアミラに近づいていくが、そこには別の理由があった……。本作で主人公ウィルを演じたジュード・ロウがインタビューに答えた。
彼との関係は、友情が成熟期を迎えたというか、歳もとったし、信頼の度合いも高まったという感じかな。もちろん、彼と仕事を初めてしたときから、彼には映画製作者としての才能も経歴も十分にあって、信頼を置ける監督であることは明白だったけれど、それが2度目の仕事になると、個人的な経験値として、この監督は信頼できると思えるわけだ。そして、3度目となると、彼がぼくのことをどう使うかは十分わかっていて、彼が言うなら何をしてもいいやという気持ちになるんだ。でも、そういう意味で3回とも全て違う経験だということだね。奇妙に聞こえるかもしれないが、ぼくは直接何もしないんだ。身を任せるというか、文字通り、彼の言ったままのことをして、そしてセットから引き上げる。ビデオのプレイバックやラッシュで自分の演じている姿を見ようとか、彼にどうだったか聞いて見ようなんて考えもしないさ。なぜなら、そういった生の素材を使い、思ったとおりのところにピッタリ当てはめてくれる、それが彼だということをぼくが知っているからなんだ。
ぼくにとって役か脚本が、本当にとんでもなく悪いものでなければ、「この映画を断ります」なんて言えないんだ。なぜなら、彼との仕事は、作り上げることがとても大きな喜びとなり、知性的で、興味深く、思慮深く、楽しめる、そんな見るに値する作品に参加することを意味するからさ。
ぼくが今回演じた役には、以前演じた役にはなかったような多くの要素があって、それはぼく自身が体験してきたことにすごく近いものだった。同時に、この役がとてもアンソニー自身にも近いこと、それが本当であるという感覚も感じることができた。その感覚が、ぼくを、この役を書き上げた人物に近しい誰か、その近しい誰かの魂に踏みこませてくれた。そういう見方ができることは、とても面白いことだと思えたんだ。それともうひとつ、この役には、ぼく自身の人生を映す幽霊のようなところがたくさんあって、この役を演じることによって、ぼくはその幽霊たちを追い払うことができると感じたんだ。
この作品には、独特のムードがある。それが何かと聞かれても、上手く答えることができなのだけれど。ぼくは、コメディーだとか、ロマンスだとか、スリラーだとかと断定できない作品が好きなんだけど、それは映画が人生を切り取ったものだと思っているからなんだ。この作品の、いま、今日この日に忠実であることが大好きなんだ。この作品は、「いま」について語っているんだ。ぼくとしても、実際に映画を製作している年に忠実に年代が設定してある作品に出たことがなかった。ボスニアでの戦争があって、それが映画に登場している人物たちに影響を及ぼし、ソマリアの難民たちが映画の中に出てくるロンドンや人々に影響を与える。そんなことが起こっている、まさにいまこの時を特定して語っているんだ。とても今日的だと感じられる。そういったいろいろなことがこの映画には詰まっていて、そして、またもう一度アンソニーと一緒に仕事ができるという機会にも恵まれて、というわけさ。