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『ディア・ドクター』笑福亭鶴瓶&西川美和監督 インタビュー 1/2
「西川監督という船は、乗り心地がメチャメチャ良かった」
緑の棚田に囲まれた小さな村で起きた医師の失踪(しっそう)事件。やがて意外な事実が発覚し、人間の愚かさや優しさが浮き彫りになっていく……。異例のロングヒットを記録した『ゆれる』で注目を集めた西川美和監督の最新作で、お笑い界の重鎮・笑福亭鶴瓶の初主演作となる『ディア・ドクター』。大きなうそを隠しながら村人のために奔走する医師を演じた鶴瓶と、極上の人間ドラマを作り上げた西川監督が、作品について語ってくれた。
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褒められ過ぎると怖くなってしまう……

―― 本作は偽物がテーマだそうですが、そのテーマに着目した理由を教えてください。
西川美和監督(以下、監督):昔から映画監督という存在に幻想があって、自分が監督をやっていることに違和感を抱いていたんです。でも、世間はわたしを監督として見てくれて、次もいい作品を作ってくださいね! 期待しています! とか言ってくれる。褒められるとうれしいんだけど、褒められ過ぎるとだんだん怖くなってしまうんですよね。そこから、偽者というテーマが浮かんできたんです。
笑福亭鶴瓶(以下、鶴瓶):彼女は、監督っていうものが特殊だと考え過ぎていたんだと思いますけど、映画好きなら誰でも監督にあこがれるんですよ。撮ってみたらいいんです。撮った後で、誰もが監督になれるもんじゃないとわかるんです。西川監督は、いざ自分が映画を撮ってみたらポンポン! と当たりだして、『ゆれる』が注目されてそんな気持ちになったんやろね。
監督:そうですね。鶴瓶師匠はわたしよりわかっている(笑)。
鶴瓶:だから、評価よりも自分が満足できればいいという気持ちで今回新作を撮ってみたら、またみんながものすごく褒め始めた。きっと次も悩むよね(笑)。
── そんな西川監督のように、鶴瓶さんも芸人として悩むことがあるんですか?
鶴瓶:僕だってありますよ! みんなが笑ってくれたらええけど、ピクリともしないお客さんもおるわけですから。この間も全然笑わないでジーっと僕をにらんでいる男のお客さんがいてね。ま、しゃあないわって思っていたら、本番が終わった後、その彼が僕のグッズを持って出待ちをしているんですわ。笑わなかったんじゃなくて、僕が好き過ぎて放心状態だったんやね(笑)。
自分のシーンは冷静に観られない!

── 観終わった後に、とても優しい気持ちになれる作品でした。
鶴瓶:皆さんそう言ってくれるんですよ。今回共演した八千草薫さんも、本当にいい映画やって言うてました。でも八千草さんは、「わたし、自分が出ているシーンを観るのは何か嫌なんです」って僕に言うんですよ。
監督:八千草さん、あれだけ長く女優をされていてもそうなんですね。すごく無理がないというか、自然体ですよね。
―― 鶴瓶さんご自身は、映画を観てどう思われたんですか?
鶴瓶:僕も自分のシーンは冷静に観られないんですよ! 謙遜(けんそん)しているように思われるかもしれませんけど、八千草さんと同じで安心しましたわ(笑)。とにかくちゃんと映画を観られなかったので、もう一度映画館に行って、自分でお金を出して関係者のいないところで観ます。それでようやく落ち着くんじゃないですかね。
―― 西川監督はいかがでしたか?
監督:わたしの場合は、全編に自分の手が掛かっているから、最初から最後までずっと居心地が悪いんです(笑)。

