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リリー・フランキー インタビュー『ぐるりのこと。』
  リリー・フランキー インタビュー
「面倒くさくても大切なのは人との繋がり」
 
  『ハッシュ!』(’02)で高い評価を得た橋口亮輔監督が6年ぶりにメガホンをとった『ぐるりのこと。』。うつとの闘いなど、橋口監督自らが経験した様々な出来事をもとに、バブル以降の日本の社会的な事件を背景にして、どんな困難があっても投げ出さず、決して離れない一組の夫婦の姿を描いている。 どこにでもいるような夫婦の夫・佐藤カナオを演じたのは、映画初主演となるリリー・フランキー。なんとなーく法廷画家になっちゃたり、ちょっと頼りないけど、何があっても妻・翔子を受け止め、優しい眼差しを向けるカナオを自然体の演技で体現している。“リリー・フランキーなくしてこの作品は有り得ない”と言えるぐらいの好演を見せた、リリー・フランキーさんにお話をお聞きしました。  
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「木村さんはすごい女優さんです」

―― 演じられた佐藤カナオはどんな人物だと思いましたか?

■リリー:好きな人の接し方、社会と自分の距離感、大切なものの取り扱い方とか、僕に似ているところもあります。橋口監督の中では飄々と生きている男のようですが、僕は強い男だと思いました。仕事もちゃんとこなし、家のことも投げ出さない。何事も丁寧にやっている男ですね。

―― カナオの職業は法廷画家ですが、この職業についてどのような感想をもたれましたか?

■リリー:いろいろと資料を読みましたし、実際に僕も法廷画を書いてみました。本物の法廷画家の方々も映画に出演していたので、その方々からお話も聞きましたね。法廷のシーンはセットで撮ったのですが、映画の撮影なのに被告人を演じた役者さんたちから物凄い邪気を貰いました。さらに法廷画は見えないアングルからも書くので、かなりの観察力が必要です。だから法廷ではいろんなものを被告人から貰うと思うんですよ。絵を書く職業の中でも、本当に独特ですね。

―― この夫婦のあり方をどう感じましたか?

■リリー:この夫婦の良いところは、他人の意見に振り回されないことです。だからちゃんと繋がっていられる。今は情報ツールが発達して、いろんな人とコミュニケーションが取れます。人と一緒に居るのに誰かの意見に左右されて、また違う誰かを探しての繰り返しで、乗り越えることや受け入れることが面倒になっている。だから不安感も消えない。この夫婦が素敵に見えるのは、ある意味すごく皮肉なんです。頑張っているように見えるけど、当たり前のことをしているだけ。嫌なことがあったらすぐに別れちゃって、ハイ、次みたいなことがスタンダードになっている。劇中の犯罪史の中で描かれているねじれたモラルと一緒です。そういう意味で、この作品は現代的なテーマを扱っていると思います。

―― 激しい演技のぶつけ合いもありましたが、翔子役の木村多江さんとの共演はいかがでしたか?

■リリー:木村さんは真摯に取り組んでいました。すごい女優さんです。どんどん役に入っていました。普段の木村さんは穏やかな方なので、休憩時間とかリラックスできましたし、いろいろと助けて頂きました。

―― 木村さんとの共演シーンは長回しが多かったですね

■リリー:朝から晩まで何度もリハーサルをやったんで、長回しのシーンの方がやりやすかったですね。リハーサルの段階でセリフが変ったり、追加されることもあったんですけど、忘れようがないと言うぐらい何度もやりました。リハーサルできなかったシーンの方が辛かったですね。

 

「暖かい気持ちになれるのは、人との繋がり」

―― 相当リハーサル漬けだったようですね

■リリー:冒頭の長回しは1日中撮影して、9テイクぐらい撮ったと思います。逆に嵐の二人がぶつかり合うシーンは一発撮りでした。

―― そのシーンで隣の人が泣いていましたよ。このように見る人によって着眼点が如実に違う作品だと思うのですが、リリーさんは作品を見て何を感じましたか?

■リリー:“結婚したくなった”という女性の感想を良く耳にしました。結婚という関係に限らず、人がちゃんと繋がることは面倒くさいけど、闘って、乗り越えることで人は豊に暮らせると思います。この夫婦が最終的に得たものは、人生の中で豊かなものだと思います。希望があって、暖かい気持ちになれるのは、人との繋がりなんだって。当たり前のことだけど、それを改めて気付かせてくれると感じました。

―― リリーさん的に「あぁーわかる」というエピソードはありましたか?

■リリー:いろんなことがあった後、夫婦で立ち食いそばを食べているシーンですね。平凡な一コマだけど、二人でいろいろと乗り越えてきたからこそ、あそこに居ても幸せそうに見える。ああいうのに憧れますね。

―― では最後にメッセージをお願い致します

■リリー:バブル以降の10年間の歪んだ日本社会の中で、いろんなことがあるけど投げ出さず、離れないで生きて行く夫婦を描いています。日本の犯罪史と夫婦という二つの軸があって、ちょっと重そうに見ますが、苦しくてもユーモアがあり、哀しくても救いがあるとても人間臭い作品です。そして、最後には暖かい気持ちになれますので、是非、劇場に足をお運び下さい。

   
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