『マイ・ブルーベリー・ナイツ』ウォン・カーウァイ監督 インタビュー

『花様年華』や『2046』の展開と比べて、今回はノラ・ジョーンズとジュード・ロウ演じる主役の2人に未来があるような感じがして、とても画期的だと思いました。
ウォン・カーウァイ:俳優が違えばおのずとエンディングも変わってくるものだよ。私は基本的に俳優を見てストーリーを書いているんだ。今回は8週間の撮影だったけれど、最初の7週間でエンディングはこれしかないと決心したんだ。ノラ・ジョーンズとジュード・ロウ2人の立ち居振る舞いや性格を見て、彼らの結末はこうなると決めたわけだけど、むしろ、彼ら2人が自分たちの結末を決めたようなものだね。
2人の出会いに始まって再会に至る今回の作品は、旅をして元の場所に戻って来るということで、今回のテーマ〈距離〉を描いたということですか?
ウォン・カーウァイ:この映画のテーマは〈距離〉だけれど、もちろんそれは男女間の〈距離〉というのも一つだね。でも、もっと大事なのは、ある人が持っている理想とする自分との〈距離〉のことなんだよ。自分が望んでいる幸せを掴むまでの〈距離〉ということになるかな。ノラ・ジョーンズはこの映画の中で様々な名前で出てくるね、最初はエリザベス、その次はリズやベスと名のっている。そうやって名前を変えて行くというのは、自分にあまり自信がないからなんだ。自分をかわいそうだと思っているし、別の自分になりたい、つまり変身願望があるからなんだと思う。最後にニューヨークに帰ったときには、エリザベスに戻るんだけど、それは自分に対して自信を取り戻したということを象徴しているんだよ。
その自分を取り戻す旅の過程で、エリザベスはジュード・ロウ演じるジェレミー宛に手紙を書きますね。電話やEメールという手っ取り早い手段ではなく、敢えて手間がかかり、相手に届くのに時間のかかかる手段を選びますが、それはやはり彼女の心の旅だからでしょうか?
ウォン・カーウァイ:最初はエリザベスにとってジェレミーは悩みを打ち明ける相手に過ぎなかったんだ。だから彼女は相手からの返事を期待していない。一方的に自分の悩みを打ち明ける対象が必要だったんだ。だから、ポストカードを書き続けたんだよ。自分の所在を明かしてないということは、返事を貰うことを期待していないからなんだ。なぜかというと、彼女は前の恋人にふられたことで、期待をするとその分失望も大きくなるんじゃないかと不安なんだね。自分に自信がないんだ。そういう意味では、今回の作品のタイトルは『ある女性からのポストカード』と変えてもよかったかもしれないね。
エリザベスは旅の途中で様々な人々と出会いますね。演じるデイヴィッド・ストラザーン、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン、もちろんジュード・ロウも含めて経験豊富な実力派俳優が揃っていますが、誰もが今まで見たことのない顔を見せてくれています。彼らだからこそ、あのキャラクターたちが生まれたのでしょうか?
ウォン・カーウァイ:私は基本的に脚本を書き上げてから俳優を探してくるのではなく、俳優その人を見てから脚本を書くんだ。たとえば、ナタリーはギャンブラーを演じたけれど、彼女を見てからキャラクターを膨らませて行ったんだ。デイヴィッドやレイチェルについても同じだよ。私が脚本を書くときには、出演者の顔を見て動きを見て、彼らの魅力を最大限に引き出して、今まで見たことのない一面、もう一つの顔を見せることを常に考えてストーリーを膨らませて行くんだ。
その中でレイチェル・ワイズが演じたスー・リンという女性は、『花様年華』や『2046』に登場したスー・リンチェンに通じるキャラクターなのでしょうか?
ウォン・カーウァイ:いや、それはまったく違うんだ。スー・リンの方がずっと強いよ。実は劇作家のテネシー・ウィリアムズに敬意を表して、彼女が登場するテネシー州メンフィスを舞台の一つに選んだんだ。私はずっとテネシー・ウィリアムズを尊敬していてね。スー・リンには彼の『欲望という名の電車』の主人公に通じる強さがあると思うんだ。
では最後に、本作の公開を楽しみにしている日本のファンへメッセージをお願いします。
ウォン・カーウァイ:来日できて嬉しく思っています。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』をぜひ楽しんでください。
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