『クリアネス』細田よしひこ&篠原哲雄監督 インタビュー

細田さんの演じたレオはヘヴィーな生い立ちなのに明るくて屈託がない。杉野希妃さん演じる相手役のさくらもそうですよね、危なっかしい生活をしていのに擦れた感じがありませんね。

篠原哲雄監督(以下、篠原):設定としてはホストであり、風俗嬢。しかも自宅に来ることを許している仕事ぶりなんで、世間的には相当危ない橋を渡って生きている感じはするんだけども、たまたま細田くんにしても杉野さんにしてもすごくピュアな感じの人たちだったので、汚れた感じにはならなかったんですよ。

杉野さんが持つ透明感なんでしょうね。レオにしてもホストなのに、そのイメージからは離れたところにあるピュアな感じ。それは細田さんが持っているものなのかもしれませんね。
細田さんは今19歳ですよね。今回は制服姿の高校生でもないし、ずいぶん大人っぽいです。

細田よしひこ(以下、細田):でも、設定は16歳とかなんですよ。そこがまた恐ろしいですけど。

さくらとレオのベランダ越しのシーンというのが、2人の距離感を表していていいなと思いました。あれは原作どおりですか?

篠原:そうです。かつての『裏窓』とか他にも窓越しの出会いというのはあるんですよ。ただね、今の東京で対面のビル、しかも正面を向いてっていうことがね。制作部が色々探してくれたんですが、悲しいかな僕らはマンションを借りてはじめて撮影できるわけなんです。小説ではまさに正面を向いているという書き方をされていたと思うんですが、それはなかなかないんです。で、僕らが使ったのは、斜めに見える物件で、かえってそこがね、ストレートではなく斜めに歪んで見ている感じが面白いのかなって。

細田:どうやって見つけたんですか?

篠原:あれはね、制作部って人たちが、僕がロケハンする以前に何軒も見てるんだよ。マンション自体、そうそう貸してくれるところはあんまり無かったと思う。僕は結局2ヶ所しか見ていないんだけど。あそこはしかも面白かったの。さくらの側から見るとレオはちょっと下がったところにいて、その関係性が面白いなとだんだん思えてきたんですね。そこを見てから台本の言葉もちょっと変えたと思います。これで現代の『裏窓』ができるかなと。

あのシーンが良かったので、意外にもオーソドックスな恋愛映画なんだなというのが伝わってきました。もうちょっと軽いノリの展開かなとも想像していたのですが…

篠原:かなりオーソドックスにできたと思いますけど。

そうですね。とくに、レオとの出会いによってさくらが本当に人を好きになって変化して行く姿が著しくて。その変化が面白いですね。もちろんレオも変わって行きますが、細田さんはどうやって気持ちをつくっていったのでしょう?

細田:レオの設定で、普段は出張ホストの仲間とワイワイやっているんだけど、仕事が終わった後、皆のいるところから一人抜け出してベランダで誰かにメールを送っているっていうのがあるんですけど、その時間ってレオにとってすごく大切な時間なんだろうなって思って。そこを大切に演じなきゃな。じゃあ、どうそこを大切なものだと自分の身体の中に染み込ませようかと。
撮影現場では普通にメイクさんなり衣装さんなり色んな人とコミュニケーションをとるじゃないですか。そこで自分が携帯を持ったらどうなるんだろう。携帯をいじってたら皆はどういう反応をするんだろうと試したんですよ。 最初は、『誰とメールしてるの?』とか言ってくるんですけど、しばらくすると、たとえば役者さんが台本を持っているときは誰も話しかけたりしないじゃないですか。そういうのと同じように、僕が携帯を持ったら誰も話しかけなくなってきたんです。
レオとホスト仲間の関係もそうだと思うんです。そういうのをちょっと現場で試してみようと思ったら、ほんとに皆がそういう反応してくれて面白いなと思いました。徐々に周りの人が変化して行くっていうのが、しかも自分は周りの人がどうなって行くんだろうっていうのを意識しながらだったんで、すごい面白かったです。2日目からは誰も話しかけてこないなぁとか。人の変化が面白かったです。レオが一人でベランダで携帯に向かっているシーンが自分は好きなんですよ。あの感情は大切にしたいなと思いました。

楽しげにも見えましたが?

細田:まあ、自分宛の日記みたいな。

篠原:ほんとに書いてたの?

細田:え、はい。書いてました。日記は普段からメールじゃなくてノートにつけてるんですけど。