6月16日(土)公開
犯人の追跡を主軸に置いた通常のサスペンスと違い、この映画は犯人の挑発に翻弄される新聞記者、風刺漫画家、そして事件を追う2人の刑事の心理描写がメイン。正義の名のもとに動いているはずの彼らが、狂気スレスレのところまで追い込まれる姿が生々しく、現実的な恐怖を覚える。映像であおる見せかけのスリルではなく、何かにとり憑かれた人間の暗部ににじり寄った粘り強い演出に、フィンチャー監督の新たな才能を見た。
映像に独特の質感があり、あとになって“現像”可能な最新型フルデジタルカメラを使用していることを知った。従来のフィルムともデジタルとも違う、まさにフィンチャー好みの映像が楽しめる。1970年前後のサンフランシスコを震え上がらせた連続殺人事件を再現するのだが、当時の空気を吸っているような生々しさが…。稀代のシリアルキラーにのめりこんでいく4人の男の描き方も官能的で、体感できる犯罪映画として一級品。
猟奇ものかと思いきや、その事件を捜査する者たちの心の闇に迫った意欲作で、音楽に『大統領の陰謀』のデビッド・シャイアを起用している点から察することができるように、まさにそれに倣った作りとなっている。2時間半を超える長尺もまったくだれさせない演出にも感服。特にクライマックスからラストにかけての緊迫感は相当なものでした。フィンチャー監督作品には苦手意識がありましたが、今回は降参です。
70年代のサンフランシスコでの「ゾディアック連続殺人事件」を忠実に映画化したこともあり、実際の事件が『ダーティハリー』に影響を与えたのは「ここなのね」と納得しながらマニアックに観るのもよし。いずれにせよ、『セブン』などの「いつものフィンチャーじゃない」。退廃さとフィルムノワール・タッチを控え、王道の推理映画としてミステリーの醍醐味を味わえる作品だ。しかし、2時間37分は長すぎるね。