映画評論家歴も30年を超えたが、もとは芸大受験2度失敗のトラウマ美大生だった。今もときどきイラストレーターになったりする。一番多く売れた著書は、ディカプリオ主演『太陽と月に背いて』のノベライズ(映画の小説化)本。
高級レストランの厨房にねずみが大挙押し寄せる…なんて光景はたとえアニメでも見たくないねずみ嫌いの私ですが、ピクサーの描写力にかかると文学の香りさえするから不思議。親ねずみの説得にも負けず“厨房で一番嫌われる”宿命に挑戦していくレミーの心意気が泣かせどころだが、スピード感を重視した演出もお見事。その素早さはまさにねずみ的で、序盤からクライマックスまでねずみと共に走っているような疾走感に襲われた。
マニエリスム系絵画を思わせる精緻で象徴的な映像が美しい。愛し合う夫婦が永遠の愛とは何かを見つけるまでの苦闘の話だが、末期の病に冒された妻レイチェル・ワイズのために、不死の特効薬を開発しようとする医師ヒュー・ジャックマンがあまりに感情的なので、疲れてしまった。映画は当事者ではなく第三者が観ているという認識で作ってくれないと、愛も死も押し付けがましいものになってしまう。妙に複雑な展開も効果的とは思えない。
『インファナル・アフェア』のクールな男の世界はどこへやら、情緒過多で梅雨空のごとく湿っぽい映画。非情な復讐に走るトニー・レオンの刑事も、かつての部下で今はしがない私立探偵業の金城武も、確かに傷だらけの男ではあるが、それをこう臆面もなく見せつけては香港ノワールの看板が泣く。男と女の情を絡ませることで『インファナル…』との違いを出そうとしたのだろうが、女のキャラクターが単純で描き方も荒っぽいときては…。