7月28日(土)公開
料理店に厳禁のネズミを店の花形に仕立てる大胆不敵なアイデアは走り出したら止まらない。賢いレミーは、誠実な働き者のすばらしき化身だろう。彼の傑作を食した評論家イーゴが、一瞬のうちにいじめられっ子だった昔に帰り、歓喜とともに戻ってくるシーンに陶然となる。「評論家はリスクの少ない職業」という皮肉を香辛料のように効かせ、料理人=映画人の自信を漲らせた快作。怪しい出自を誇る(?)厨房仲間もドラマティック。
高級レストランの厨房にねずみが大挙押し寄せる…なんて光景はたとえアニメでも見たくないねずみ嫌いの私ですが、ピクサーの描写力にかかると文学の香りさえするから不思議。親ねずみの説得にも負けず“厨房で一番嫌われる”宿命に挑戦していくレミーの心意気が泣かせどころだが、スピード感を重視した演出もお見事。その素早さはまさにねずみ的で、序盤からクライマックスまでねずみと共に走っているような疾走感に襲われた。
厨房で最も忌み嫌われるはずのネズミを主人公に、見習いシェフとタッグを組ませ、究極の料理を創造するという発想は面白い。レミーがパリの美しい夜景を俯瞰するくだりなど、バルザックの『ゴリオ爺さん』の冒頭を思わせる味がある。ペンではなくレシピでパリを制するという野心の行方やいかに? 次々に繰り出される料理も食欲をそそる。ピクサー独特の立体感ある生々しさとディズニーの楽天的な成功神話を融合させた果敢な試みだ。
背景や道路などを観ていると、もはや、3D-CGどころじゃなく、実写としか思えない(観えない)。そして、実写そのものの背景などとキャラの完璧な合体。ピクサーの3D-CGアニメは、作品を重ねる度に驚きが増す。ただし、今回は、ストーリーにイマイチのれず。なんで主人公がネズミなのか…衛生観念をめぐるエピソードがあってもいいはずなのに、なにもなし。ねぇ、ネズミが関係している食事が美味しそうに思える?
人(ネズミ?)並みはずれた嗅覚と味覚を持つネズミのレミーの夢はシェフになること。料理の苦手な見習いシェフとの出会いで大事件が起こる・・・。ほんわかとした色合いのCGで再現されたパリの街並み、食べてみたいなと思わせるフランス料理を見ていると、なんだか自分もパリにいるような気分になる。そして、「夢は見るものではなく、勇気を出して行動した者だけが手に入れることの出来るものなのだ」と言うことを素直に受け入れられる、やさしい作品だ。